トライアングルエヒメ

こんな楽しいことが仕事でいいの?
って思うくらい楽しいんです。

愛南町「うみいろキャビン」オーナー 徳茂様

父からの空き家譲渡をきっかけに、あこがれていたゲストハウス運営に挑戦


このお宿をやろうという風になったきっかけ、経緯を教えていただけますか。

スノーボードが好きで長期でスノーボードに行った時などよくゲストハウスを利用していました。滞在中いろんな人 と知り合えてとても楽しかった経験からゲストハウスのような宿をいつかやってみたいなと思っていました。父から 使っていない古い空き家をもらったことがきっかけで民泊を始めようと思いました。ボロボロにいたんでいたので改 修工事が必要でしたが空き家の再利用にもなるので決めました。
愛南町は40番目の札所があることで遍路ルートにもなっていて、たくさんのお遍路さんが通りますが宿も少なく隣町 や宇和島市に泊まる方も多いと聞いていました。もっと愛南町に泊まってほしいなという思いもあって民泊宿を作り 2023 年の9月に始めました。息子の協力もあり、副業で何とかやってこれました。

ご家族でリフォームされたそうですが、手作りとは思えないクオリティです。

床も抜けるぐらいの古い建物だったので、中も外も全部剥がして改装しました。主人が大工なので難しくはなかった です。私は素人ですがデザインを担当しました。愛南町は海がとてもきれいなので、愛南の海をテーマにした宿にした いなと思い、「うみいろキャビン」という宿名にし内装も その海色になるようにしました。

今はどんなお客様が来てらっしゃるんでしょうか。

約半分がインバウンドのお客さんです。ヨーロッパと台湾の方が多めですがいろいろな国の方がお遍路旅やサイクリング旅などで来られます。自分の自転車を日本まで持ち込んで愛媛県を一周とか、四国を一周、みたいなスタイルで楽しそうです。

オーナーの徳茂さんとゲスト
オーナーの徳茂さん(左)。ヨーロッパからのゲストと。

日本の方はダイビング、釣り、お遍路、出張で来てもらってます。時々作業に集中したいっていう目的で来られるこ ともあります。絵本作家さんや刺繍作家さんなど、こもって作業されたようです。
民泊を始めたいっていう方も興味本位で泊まりに来てもらっています 。同じ山に登る仲間のような感じで盛り上がります。

基本構造部以外は全て入れ替わったという全面リフォーム。
うみいろの青と白を基調とした爽やかな空間が出来上がった。

年間180日、フル稼働中


リフォーム工事にかかった時間と費用はどのぐらいかかりましたか?

工期は4ヶ月ぐらいで、費用は、水回りも含め柱以外はほぼ全部替えたので350万円くらいです。家具家電を入れると 400万円くらいでした。

お客様の入り具合=稼働状況はいかがですか?

民泊は年間180日稼働という縛りがありますので、180日分はフル稼働しています。愛南町の良さを味わってもらえるように 、春、夏、秋のおすすめの季節以外で宿の休みを取り予約調整をしています。

利用の予約というのはどういうルートで入ってくるんでしょうか。

インターネット経由ですね、AirbnbやBooking.comなどから予約いただいています。
予約に際してゲストの方とのコミュニケーションを楽しんでいます。
どちらかというとAirbnbのほうがたくさんコミュニケーションを楽しめる印象です 。どんな方かを表現する場が沢山 あるからかもしれません。

「Airbnbのゲストは質が高い」を実感


AirbnbとBooking.comの違いについて、ご自身から見たは印象を教えていただけますか?

Booking.comは予約が入りやすいですがキャンセルも多めです。Airbnbはいままで一度もキャンセルが出たことがないですね。うちは2サイトとも「キャンセル可能」という設定にしていますがキャンセルを回避したい方は設定の変更もできます。
仕組み上の違いとしては、AirbnbゲストのAirbnb利用履歴の表示や事前承認という仕組みもあります。宿泊施設側からの事前承認がないと泊まれないという仕組みです。

もう1つは、Airbnbのゲストが泊まられた後に、宿側からお客さんの評価をする仕組みがあります。そのゲストをほかの宿の方にもおすすめしますか?というような項目があったりします。この評価はゲスト側には見えないようです。

こういった仕組みによって施設側からみて質の高いゲストが優先的に来てくれるような流れが生まれたのかなと思います。

海外のお客さんとのやり取りは基本的には英語になるんでしょうか。

事前にサイト上で日本語に翻訳されてコミュニケーションが取れています。お会いした時に簡単な少しの英語で何とかなってます。

徳茂さんはサービス業への挑戦は今回が初めてだそうですが、旅人を迎え入れるという新しいお仕事の印象はいかがですか?

これを仕事としていいの?と思うぐらい楽しいです。もう仕事というか趣味みたいな感じですね。海外の方とコミュニケーションとる機会はなかったので人生変わりました(笑)。
日本の方も旅の様子を話して下さったりお手紙いただいたり楽しみをいただいてます。英語はそこまで得意ではないですがgoogle翻訳を使ったり、身振り手振りでのコミュニケーションでなんとかなっています。わからないままのこともありますがそれも含めて楽しんでいます。

宿泊施設での就業経験もある息子さんが、現在の運営パートナー。

オリジナルのウェルカムドリンクは、地域への広報も兼ねるアイデア商品


ダイニングのカウンターにジュースが置いてありますが、これは?

私の実家が柑橘の加工の仕事をしているんですが、そこで作ったウェルカムドリンクです。あと冷凍庫にウェルカムシャーベットを用意させてもらっています。ジュースは100パーセントの生絞りジュースなので、柑橘の違いで3種類ぐらいあります。
シャーベットは、 全部で4種類あるんですけれども、その時の宿泊の人数の方によって、合わせて用意させてもらってます。無添加で、柑橘とグラニュー糖だけで作ったものなので、アレルギーにも対応できるかなと思ってます。 いろいろ種類を置くことで、リピーターの方にも楽しんでもらえたらと思っています。

ご実家の加工工場で制作した、ウェルカムドリンクとシャーベット。
お土産として追加購入していくゲストも少なくないという。

オリジナルのラベルがかわいいですね。

ジュースはウェルカムドリンクとして作ったんですけど、宿の名前をの入ったジュースを道の駅で販売することで、地元の人にも、県外からの人にもこの宿のことを知ってもらえるんじゃないかと思ったんです。
実際にこれを販売し始めてから、うみいろキャビインの名前を町内の人にも知ってもらえるようになって、声をかけてもらえるようになりましたね。 地元の方もこれを見て泊まりに来てくださった方が何人かいらっしゃったので、よかったです。

「地域の重荷」になっていた空き家が「新しい賑わいの中心」へ生まれ変わる


ここにたくさんのゲストが来てくれるようになって、街の周りの方から何か反応はありましたか。

近所の方がよく言ってくださるのは、 活気が出てきたとか、 空き家が一軒でも減るのがうれしい、といったことですね。空き家の倒壊も怖いですし、台風が結構来る地域なので、古くなった建物からモノが飛んでくるようなことになるとご迷惑にもなりますから。
そういえば、隣にある一軒家を最近買われた方が現地を見にいらしたんですが、そのとき、うちの空き家が綺麗になったことが背中を押したんですとおっしゃっていましたね。ゲストの方だけでなく、地域のみなさんとのやりとりが増えたこともすごく嬉しいんです。

徳茂さんの御一家は地元とのつながりをたくさんお持ちのようですが、うみいろキャビンの様子をみて、うちの空き家でも民泊をやってみようかな、といった声はありますか?

実はいま2軒目の宿を作っているところなんですが、物件は愛南町内の方からいただいた空き家なんです。ご自身でやることはできないけれど、空き家を放置するとすごく税金がかかったりする(編集部注:固定資産税が6倍にもなってしまう)ので、そうした負担がなくなるだけでも手放すメリットがあるということでした。こちらも、また新たなご近所の方との交流の場になったら嬉しいです。

愛媛県には、空き家をお持ちの方がたくさんいらっしゃると思いますが、民泊への空き家活用はおすすめできますか?

はい、ぜひおすすめします。いろいろな国の方と出会えて、空き家も活用できて、仕事としても楽しいと思うので、ぜひみなさんにやっていただきたいです。
未経験でも、仕事をしながらでもできます。若くなくても、デジタルが苦手でも、私がなんとかなっているくらいなので、きっと大丈夫です。民泊仲間もできるので、そういった方々に分からないことを教えてもらうこともできます。民泊がもっと増えて、繋がりがさらに広がるといいですね。

空き家の民泊活用プロジェクト紹介動画

本記事のオーナー様も出演されている愛媛県の民泊活用×インバウンドの取り組みの最前線が分かるインタビュー動画です。 

■プロジェクト事業の紹介記事はこちら
https://note.com/tryangle_ehime/n/n50f741f366b0